僕の言葉、君に捧ぐ。

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前の投稿 - 次の投稿 | 投稿日時 2019-1-9 23:31
kyou1102  懸賞金1億ベリー   投稿数: 895
この物語は、とある夏休み前のいつもと違う。
星の降る夜まで続いた僕と彼女と同級生達を巻き込んだ。
少し不思議な1週間の物語である。

蝉時雨が鳴り響く校舎は、あと一週間で「夏休み」と言う僕等、
学生に取ってのこれからの楽しみで浮かれる者ばかりだ。
けど僕は違う。
予定もなく恐らくバイト三昧の日々が待ち受ける夏休みが憂鬱で仕方がなかった。

授業の終わりを告げるチャイムが鳴り、周りの皆はまた夏休みの計画を話し始める。
嫌気をさし携帯をいじっていると、隣のクラスの幼馴染で僕とは正反対で陽気な直樹(なおき)が、
面白がって僕の顔を覗いてきた。
「良二(りょうじ)君、また携帯ばっかいじって。学生らしく夏休みを楽しみにしろよ」
「夏休み、夏休みってな。知ってるだろ?予定ないの!本当夏休みなんてなくなればいいのに!!」
直樹は笑いを堪えながら、僕の携帯を取り上げてきた
「何すんだよ!」
「アハハ、お前って奴は。だから澤田に振り向いて貰えないんだよ!」
馬鹿!と携帯を取り返し、澤田の方を確認する。
良かった。彼女は友達と話すのに夢中になってこっちの話なんて聞こえてない。

澤田あゆみ。彼女は背が低くショートヘアーで、それでいてお淑(しと)やかで在り
僕がイメージする「女の子」と言う言葉がぴったり似合う。
密かに思いを寄せる女の子だ。

「彼氏いないらしいぜ」
直樹がまたたぶらかすように僕にちょっかいをかける。
「知ってるよ!そんな事!」
「チャンスじゃん!良二。告っちまえよ」
「・・・出来る訳ないじゃん。」
そうだ。こんな僕なんかが、彼女に告白出来る訳がない。
高校に入って3ヶ月。彼女と話したのなんて挨拶とプリントを回収する時の「はい」だけ。
彼女と接点なんて同じクラスなだけ。

「良二。実はな朗報を持ってきたのだ」
「朗報って澤田に彼氏いない事だろ?」
「実は!」
そう言うと直樹は、自信満々に自分の携帯を僕の目の前に持ってきた。
画面に映っているのは、日頃よく使うSNSのグループチャットだ。

「これが何?」
すると直樹は呆れた顔で画面を指さす
「よーく見てみ?」
僕は、目を凝らして画面を確認した。グループ名‟夏休みはっちゃけ隊”?
実に学生らしくふざけてるなー。とメンバーを見ていると。
そこに澤田あゆみの名前を発見し発狂しそうになった。
直樹の名前もある。直樹の顔を見ると凄く鬱陶しいドヤ顔をしている。
「実はさ。夏休み皆で花火大会行こうって話になって今女子5人。男子5人集めてんの」
「ちょっと待て!なんでお前がこのグループに?」
「いやー。香織(かおり)いるじゃん」

香織?あー。僕と直樹と同じ小学校だった兄貴がいるからか男勝りで、
おちゃらけ系の渡辺香織か。

「いるね。あれ?お前仲良かったけ?」
「家近所だしな。んで香織が誘ってくれてさ」
いいなー。僕も渡辺と仲良くしとけば良かった。
「で?何?自慢しに来たの?」
「捻くれてるねー。言っただろ?朗報だって?」
その一言に、何故だろうか。鼓動が早まった気がした。

「実はさー。女子5人集まったんだけど、男子あと1人足りないのよー。」
「え!?マジ!?」
僕が喜んだ事を良い事に、直樹は澤田や他の女子が話してる所に行って、声をかけ始めた。

「澤田さん!矢野っち!」
「どうしたの?中野君?」
澤田さんの声だ。嗚呼なんて心を癒してくれる声なんだ。
「あと一人なんだけど、良二が丁度空いてるみたいでさー。」
えっ!?
「良二って・・・。どんな子だっけ?」
ほらー。矢野なんて僕の事わかってないじゃん!!
「園部君だよ。ほらあそこの席に座ってる。」
澤田ーッ!!僕の事わかってくれてたのかーッ!!
「そうそう、園部。いいかなーあいつでも?」
「いいんじゃない?ねぇあゆ。」
「うん。いいよ」
ありがとうーッ!澤田!直樹ーッ!!あと矢野!!

その反応を見て、嬉しそうに戻ってくる直樹は、こっそり僕の耳元で
「お昼ご飯よろしくな」と囁き自分のクラスに戻って行った。
直樹が教室に帰っていくのを確認し、すぐに送られてきた招待により
グループチャットに参加した。

休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り響き静まり返る教室の隅に
未だに僕の鼓動が鳴りやまなかった。
この日受けた授業のほとんどを僕は覚えていない。
ただただ嬉しくて。ただただ澤田との共通点が増えた事が誇りに想った。

気が付くと、午前の授業は終わりお昼休みの合図が鳴る。
未だに震える身体に、ブルルっと携帯のバイブレーションがズボンの右ポケットで振動した。
すぐに確認するとさっき入ったグループチャットで矢野が、僕に自己紹介を要求している

【園部っち、自己紹介よろー。】
震える身体を深呼吸で一旦落ち着かせ返信をゆっくり打つ。
【2組の園部良二です。直樹の紹介で入りました。よろしくお願いします。】
自分でも固い挨拶だな。と、自分の文章を見て想っているとすぐにまた携帯が振動した。
【固ェなw 良二(≧▽≦) まぁ俺の同級生だからよろしく頼んます♪】
直樹らしい返信で、また少し落ち着きを取り戻した。
ふーっと息を吐くと。また携帯が振動した。
【園部君。同じクラスの澤田あゆみです。夏休み楽しもうね(#^^#)】
そのコメントを見た瞬間、顔がにやけてしまった。
澤田の方を見ると、ぺこりと一礼し手を振ってくれた。

もうそれだけで僕は十分だった。
あの憂鬱だった1限目終わりまでは、なんだったんだ!?と自分にツッコミながら
澤田のコメントを見ていると次々に同級生から返信やスタンプなどで、いつの間にか澤田のコメントが
画面から消えてしまっていた。
必死にスライドして画面を戻すも次々と入るコメントにスライドが追い付かず
少しだけ不機嫌な顔になってしまった所に直樹がお昼ご飯を奢ってもらおうと僕を誘いに来た。

「楽しんでるなー良二。」
どうやらご機嫌そうな様子の直樹。
必死に照れ隠しするも、直樹はお見通しの様でニヤニヤしている。
また携帯のバイブレーションが鳴ったとは思ったものの確認せず直樹と食堂へ向かった。

廊下を歩いている時も直樹は自分の事の様に嬉しそうにしている
「良かったなー。良二。俺は凄く嬉しい!」
「あのな。でも澤田と直接メールした訳じゃないからさ」
「そこはお前次第だろ?応援してんぞ」
「うっせー。」
食堂に着くや否や早速今日の日替わり丼(どんぶり)を奢らされ
遠慮する仕草もなく直樹は、大盛カツ丼を平らげる。

「で?これからどう攻め落とすつもりなんだ?良二君。」
「え?」
「え?じゃねぇよ!澤田の事だよ!」
「うーん。」
「うーんってなお前。折角スタートラインに立てたんだ。色々あんだろ」
「澤田と直接メールする・・・とか?」
「いいな!その意気だ!」
「でもさー。勇気ねぇわ」
弱気な僕の発言に直樹は、箸を止め呆れたように話を続けた。

「良二、別に俺は面白がってお前をこのグループに誘った訳じゃないんだぞ」
「わかってるよ。」
「お前にとって簡単なことじゃない事くらい百も承知。俺だって好きな子になんてどう打とうかなーとか悩むよ。」
「直樹でも?」
その一言が意外だった。誰とでも仲良く過ごせる直樹でも異性ではそうなるんだと。
「当たり前よ。俺達小心者だろ?」
「ハハ。言えてる。」
「きっかけなんてなんだっていいよ。同じクラスなら明日の課題なんだっけ?とかでもいいじゃん」
「頭いいね!」
「だろ?そっから趣味とか聞いちゃえばいいんだよ」
「そっか。そうするよ!」
「おぅ!頑張れよ!良二!」
嬉しそうに微笑んだ後、直樹は再びお箸に手をつけカツ丼を食べ始めた。

直樹からのアドバイスを早く実行したくて午後からの授業もまた頭に入らなかった。
次の休み時間に送ってみようかな。
いやでも帰り際に直接聞かれるのも怖いし。
やっぱり帰ってから送ろう。

長い1日を終え帰宅の準備をしていると直樹が迎えに来た。
「帰るか」
「・・・だな。」


グランドには、野球部とサッカー部が続々と準備に取り掛かっている。
校門を過ぎ直樹が背筋を伸ばし、仕事終わりにビールを飲むお父さんの様な声を上げた
「くー!あと1週間だー!」
「呑気でいいよな。直樹は」
「呑気じゃねぇーとやってられっかよ」
直樹がまた背筋を伸ばし終えるとまた澤田との話題に切り替わった。
「で?良二なりの作戦は練ったのか?」
「・・・作戦?」
「そうだよ。澤田と距離を縮めよう作戦」
「なんだよ。そのままだな」
「だって楽しみじゃん。もし上手く行ったら俺は嬉しいし。失敗しても次行けばいいしな」
「お前な。まだ始まってないんだぞ」
「始まる前から終わりかけてたのは、どこの誰ですかー?」

直樹の一言に、少し沈黙が生まれてしまう。
沈黙を遮るように直樹が呟いた。

「俺さ。やっぱあの時悔しかったんだよな」
「・・・」
直樹の言葉の意図は、すぐにあの日の苦い思い出の事だとわかった。
中学3年になった僕は、ずっと思いを寄せていた女の子を勇気を振り絞り放課後呼び出し
直樹が見守る中、告白するも撃沈した事。

今思えば脈すらない無謀な戦いだった。
告白するか迷って辞めようとした時、告白しなきゃ一生後悔するぞと背中を押してくれた直樹。
あの日があるからこそ、直樹は僕の恋愛に対して積極的になってくれる事もわかっている。

「直樹。今度は絶対に自分の力でなんとかするよ」
自然と出たその一言に直樹は、また笑顔で答えてくれた。
「俺に出来る事なんてお前を応援する事だけだからさ。だから精一杯俺はエールを送るよ」

それから少しバイトの愚痴やゲームの話で盛り上がり、電車に乗り
一駅越えた自分達の住む街に戻ってきて直樹と別れ
20分程歩いて自宅に辿り着いた。

自宅に入り携帯を確認する。
グループチャットを確認すると20件もの未通知が溜まっていた。
直樹からの応援メールも届いていた。
想えば携帯が、これほど鳴ったのは、中学の卒業式以来ではないか。
思い出に浸りながらメールを確認すると、身に覚えのない招待メールが届いていた。

送り主:不明。
【貴方の大切なコトバを、コノ子に教えてクダサイ】

なんだこれ?
メールを開くと。
画面中央に、アニメタッチの幼虫がこちらを見つめている。

「なんだこれ?」
少し考えて【 友達 】と打ち送信すると
幼虫は、喜んだように上下に身体を動かし画面上に表れた【 友達 】という言葉を食べ始めた。

違う違う。こんな事してる暇ないんだ!
グループから澤田の個人チャットを開き勇気を振り絞り
【こんばんわ。同じクラスの園部です。】
まで打つも、まだこの時間だ。
もしかしたら矢野達と一緒にいるかもしれない。
そんな中、僕からの個人メールが来て、同級生に言われるのも。
急に不安になり携帯を閉じ、自分の部屋に戻りベットに横たわる。
そして自分の意気地なしな部分が嫌で、気晴らしに音楽を聴く。

「良二ー!ご飯出来たよー!!」
母の声に、目を覚まし時計を確認すると時間は、19時45分。
やばっいつの間にか寝てた。と1階へ降り夕食を食べ
お風呂に入り。携帯を確認し勇気を振り絞り澤田にメールを送ろうとするも
グループチャットで、矢野が今日の課題についての質問が入ってしまい
どうしようもなくなってしまった僕は、また明日にしようとベットに横になった。

次の朝。
携帯のアラームと同時に母の声によって目が覚め
制服に着替え下に降りて朝食を食べ
学校へ向かう。

駅に着くと直樹が、ニヤニヤしながら近づいてきた。
「どうだったんだ?」
「実はさ。」
直樹に昨日の自分を話すとヘタレと呆れ同時に溜息をつく。

「ゆっくりでもいいけどさ。せめて夏休みまでには何か仕掛けとけよな」
「わかってるけどさー。」
責められるのが嫌になり話題を昨日の招待メールに変えた。
「え?幼虫?お前そんな事に時間費やしてたの?」
「違うよ。なんか大切な言葉を教えてくださいって来てさ」

そう言って昨日の画面を直樹に見せた所で、電車が到着し
乗り込んだ。

「なんだこれ。あれか?今流行ってるネコに言葉教えるゲームのパクリか??」
「わかんないけどさ」
「で?何教えたんだ?澤田とかか?」
そう言ってまた直樹は、楽しそうに微笑んでいる
「違うよ!あれだよあれ・・・。」
「あれってなんだよ?」
「・・・あれだよ。」
「あれ?」
‟あれ”?なんでだ。思い出せない。幼虫に打った【言葉】を。

「ほら俺達の事だよ」
「幼馴染?」
「違う。仲いい奴の事」
「仲いい?あー!」
そう言うも直樹も、言葉を詰まらせる。
「あれだよな!わかるよ!あれ・・・えーと。」
「あれだよね。ずっと一緒にいる奴の事」
「そうなんだよな。くそー!ここまで出てるのになんでだー!!」
苛立ち始めた直樹が、話題を変えようと幼虫に何か言葉覚えさせようぜと言いだした。

「そうだな。もしかしたらそれで思い出すかもしれないしね」
そう言って二人で何を覚えさそうか相談した結果

【 夏休み 】という言葉を打ち込み、昨日と同じ様に
幼虫は、喜んだように上下に身体を動かし画面上に表れた【 夏休み 】という言葉を食べ始めた。

「こうして見ると可愛いんだな。」
直樹が夢中になり始め
「どんどん覚えさそうぜ!」と言い始めた時
電車が学校のある街に着いていた。


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kyou1102  懸賞金1億ベリー   投稿数: 895


電車から降り駅の改札口を抜けると
同じ電車に乗っていた澤田と矢野と渡辺が、こちらに気づき声をかけてきた。

「おっはよー!」
「おお!香織に矢野っちに、澤田さん!同じ電車だったのか!」
澤田さんだ!朝から通学一緒だなんて、凄く幸せだなー。
「あれ?園部君と中野君って仲いいんだね」
矢野の問いかけに直樹が自然に受け答えしている。
いいな。僕もあれぐらい女子と自然に話せるようになれたらな。と思っていると
直樹が僕にアイコンタクトを送っているように思えた。

うん?なんだろう。なんだか凄く直樹がこっちを見てくる。

「てか香織。お前矢野っちに言ってねぇのー?俺達幼馴染だって事ー」
「えー。そんなん言う必要ある?」
「ひっでー!小学校の時一緒に、カブトムシ取りに行った仲じゃん!!」
「馬鹿ーッ!!小学校の話でしょー!!」
「えー!香織。カブトムシとか好きなの?」
「違~うッて!!直樹が無理やり誘ってきたの!!」

「仲いいんだね。香織と中野君」
「そうだね。あいつら小中学校一緒だったからさ」
って。えーっ!?澤田さんから話かけられたの!!??
直樹の方を見ると、凄く嬉しそうに僕の方を見ている。
すかさず少しずつ距離をあけようと足早に進もうとする直樹。

「他にもあるぜー香織の恥ずかしい話。小5の時にさー間違えて小1の弟の制服着てきてさー。」
「ちょっとやめて!!その話!!無茶苦茶恥ずかしい話じゃん!!」
「えー!?何それ!聞きたい!その後どうなったの??」

「そう言えばちゃんと話すの初めてだね」
澤田のお淑やかな声が、僕の耳にすーっと入り込んだ。
「そ・・・そうだっけ?そうだね!同じクラスだけど ハハハ。」
「あっ花火大会楽しみだね!行くんでしょ?園部君も」
「うん。でも緊張するなー」
「緊張?なんで??」
「だって俺、そういうの初めてでさ。仲いいのって直樹だけだし。」
「そうだよねー。私も香織と明日香に誘われて入ったものの。あとの人たちってあんまり絡みないんだよね。」
「えっ?そうなの??」
自然と心に浮かんだ言葉が、口から出てしまった。

「うん。明日香とは中学一緒でずっと一緒で。あの子そういう行事ごと好きでよく誘われるんだけどね」
「ハハ・・・。澤田も大変なんだね」
「そーなんだよ!大変だよ!」
澤田の見た事ないような冗談を言う顔が凄く可愛く想えてしまい
思わず照れてしまった。
このまま時間が止まればいいのになと思っていると

「あゆーっ!園部君ー!遅いよー」っと矢野の呼ぶ声が聞こえ
「はーい!」と澤田は、3人の方へ走って行ってしまった。
残念そうに落ち込んでいた所、澤田が振り向き
「園田君、いくよー。」と手招きしてくれた。
その姿さえも可愛く想えた。

学校に着くと直樹が早速先程の状況を聞き込みにきた。
「せっかく合図送ったのによー。でも結果オーライだな!」
直樹は、満足そうだった。
けれど夢のような時間を送れた僕は、直樹の言葉が耳に入らなかった。
「聞いてんのか?良二ー!!」
「え?ああ!良かった良かった!」
「お前絶対に聞いてなかったろ?まあいいや。これでメール送りやすくなったな!」
「メール?」
「馬鹿!さっきは、ありがとうとかでもいいんだよ!」
「あっそっか!」
直樹は、ずーと僕を見ている
「何?」
「いや、見とかなきゃ送らなそうだからさ。」

「・・・後でちゃんと送るよ」
「あー!もう歯がゆいわ!携帯貸せ!」
そう言って、直樹は僕の携帯を取り上げ何やら打ち始めた
「ちょっと待ってよ!」
「はい!そうしーんと」
「えぇ!!」
「あっ。間違えて幼虫に送ってた。」
「え!?」

画面を確認すると
幼虫は、【ありがとう、大好きです】という言葉を嬉しそうに食べている。

「おぃ!大好きってなんだよ!!」
「それぐらい言っとかなきゃダメだろ!」
「もういい!送るよ!」
澤田のチャットに切り替え【さっきは、ありがとね。】と送った。
「なんだよ。つまんねーな。」
「いいだろ!送ったんだから!」
「まっ!前進したからいいか!」

するとすぐに携帯が鳴り確認すると澤田からの返信だ。
【こちらこそありがとう(*^^*) 園部君と少し仲良くできて良かった♪ また話そうね♪】
僕のテンションは、最高潮になった。
その隣で僕以上に幸せそうに声を上げる直樹。
「やったな!良二!!おめでとう!いやまだ早いか!!」
「やったよ!!直樹!俺頑張るよ!!」

喜んでいると、チャイムが鳴り始め
慌てて4階まで上がり教室に入る。

走ったのもあるが、この鼓動の高鳴りはきっと澤田のお陰だ。
本当に後で直樹にお昼ご飯奢らなきゃ。
それ位嬉しかった。

お昼になり、また直樹が僕を迎えにきて
食堂へ向かった。
今日の日替わり丼は親子丼で、昨日と同じ様に直樹は大盛を頼み席に座る。

「そういえば直樹は、好きな人とかいないの?」
その一言に、口に含んだ親子丼を吹き出した
「ゴホゴホ・・・」
「えー!?大丈夫か!?」
「お前な・・・。突然過ぎるわ!」
「あっ。そう言えば中学の時、一瞬だけ渡辺と付き合ってなかったけ??」
「ゴホッ・・・。」
再び直樹は、むせて水を一気飲みした。

「お前。本当容赦ないな」
「いや。そういえば付き合ってたなーって思い出して。でも仲いいよな」
「付き合ってみたものの。なんか違うって言われたんだよ」
「へー。で?」
「で?ってなお前・・・。」
珍しく直樹が焦っているように思えた。
また水を取りに行って戻ってきてすぐに水を飲みほした。

「ふー。アイツとは、今の関係の方がいいんだよ」
「そっか。」
「なんだよ。」
「いやーなんか直樹らしくないなーと思って」
「うっさいわ!俺にも‟そういうの”あるって言っただろう。」
「そういうの?」
「あー!もういいだろ!飯が不味くなる!」
そう言って直樹は、親子丼に再び手を付けやけ食いするようにたいらげた。

「それよりお前、澤田さんに返したのか?」
「あっやば!まだだ!」
携帯を取り出し、澤田にメッセージを返そうとしたが、違和感に気づいた。
「あれ・・・?」
「どうした?」
直樹に、画面を見せた。
先程届いた澤田のメッセージの一部の文字が消えていた。

【こちらこそーーーー(*^^*) 園部君と少し仲良くできて良かった♪ また話そうね♪】

「なんだこれ?」
「たしか顔文字の前に何か入ってたよね。」
「うーん。ってかお前の送ったの消えてるじゃん。」
「えっ!?」
澤田のメールの上の自分が送ったメッセージ

【さっきは、----ね。】

「・・・本当だ。」
「携帯がおかしくなったんじゃね?」
「かも。」
「学校終わったら携帯屋行くか。」
「そうだね。」

お昼を済ませて、午後からの授業を終え
直樹と共に地元に戻り、近くの携帯ショップへ足を運んだ。

そこでも違和感を感じた。
僕等が入ってすぐに出て行ったお客さんに対しての店員さんの一言だ。

「----ました!」

その一言に直樹と顔を合わせた。
すると店員さんがこちらに近づいてきた
「いらっしゃいませ。今日はどういったご用件でしょうか?」
「あ、あの携帯の調子が悪くて」
「悪い?と言いますと?どういった状況でしょうか?」
「メッセージの一部の文字が消えていて読めないんです」
「かしこまりました。そちらの席に座って少々お待ちください。」

その後、携帯を調べて貰うも、これと言った不具合は見つからず
一旦様子見となって携帯屋を後にした。
コンビニに立ち寄りアイスを買って直樹とこの出来事について考えた。

「どういう事だ。良二の携帯の文字が消えて、店員さんの言葉もおかしかった」
「それに、その言葉を思い出せない。」
「・・・なんか心辺りないのか?」
「心辺りって言っても。」
「ほら!変なサイト見たとか」
「見てないよ!」

「・・・そうか。だとすると・・・。うーん。わかんねぇー」
思い当たる節を考えに考えた。
そして一つだけ心当たりを見つけた。

「・・・あのさ。」
「おっ!なんか思い出したか!?」
「あの幼虫に、直樹なんて送ったっけ?」
「幼虫??あー!ゲームのやつか!確か・・・。」

直樹が思い出そうとするも、今朝の様に言葉が詰まった。
「あれ?なんだっけ。いや覚えてるよ!」
「澤田に送ろうとして間違ったやつだよね」
「そうそう!・・・ってちょっと待てよ!まさかあの虫が原因っていうのか!?」

「俺もあり得ないとは思うよ!でも一番可能性があるのは・・・。」
気になり携帯を取り出し幼虫とのチャット画面を開く。
すると、幼虫は、繭となり繭には文字化けした言葉が絡まっている。

「この文字化けしてるのが、今まで送った言葉ってことか。」
「かも知れない。」
「・・・良二。紙とペンあるか?」
「ノートとシャーペンなら」
「今から言う言葉を書いて、その後打ってくれないか」
「・・・わかった。」

直樹が選んだ言葉
【学校】

ノートに書き込み、繭の画面で【 学校 】という言葉を打ち込んだ。
すると繭の前に【 学校 】という文字が表れたものの
繭はピクリとも動かなかった。

「・・・夜お互いにメッセージを送ろう。」
「そうだな。これで忘れたら確定だな。」

そう言って解散し自宅に着き澤田にメッセージ返すのを忘れていたので、
返事を返した。

【そうだね!また話そう。】

送った後に繭を確認するも、やはり【 学校 】という言葉は残ったまま
繭は、ピクリとも動かなかった。

夕食を食べお風呂に入り暫くしていると直樹からメッセージが届いた。
【学校。文字消えてないか?】
【学校。うん消えてない!し繭もピクリともしてない】
【良かったー!やっぱり気のせいかな?(; ・`д・´)】
【かもね!】
【なんか安心したら腹減った(´-ω-`) また明日な!】
【うん!おやすみー!】

そう言ってベットに横たわり眠りについた。

次の朝を迎え、いつもの様に携帯のアラームと母の声に起こされ
制服に着替え朝食を食べ
駅へ向かう。

向かう途中、携帯のメッセージを確認するの忘れてたと思い確認すると
澤田からメッセージが届いていた。

【おはよう(#^.^#) もうすぐーーーだね!それまであと一息(*^-^*) また話せるといいね♪】
澤田と朝からチャットが出来るなんて僕は、なんて幸せなんだ。と思いながら
【おはよう!今日も同じ電車だったらいいね!】と送り返し駅に辿り着くと
血相抱えて僕の方に直樹が走ってきた。

「どうしたの?そんなに慌てて」
「どうしたのって・・・。お前昨日の事覚えてないのか!?」
「昨日の事?昨日って確認したやつ?」
「そうそれ!」
「あれって覚えてたから違うかったじゃん」
「それが今朝起きたら忘れてんだよ!」
「何を?」
「言葉だよ!!」

「言葉・・・?あっ!」
直樹に言われ急いで携帯と昨日のノートを取り出した。
繭の前にあったはずの言葉が無くなって
ノートに書いたはずの言葉も消しゴムで荒く消したように薄くなっている。

「そんな・・・。」
「その繭消せないのか。」
試しにチャットを消去しようとしたが、エラーが発生し
トップ画面に戻されてしまう。

「どうしよう消せない。」
「とりあえず行くか。」
「行くって何処に!?」
「何処って・・・。何処だ。」
直樹と顔を合わせ、とりあえず身体が覚えている通り電車に乗り
次の駅にある 何かに向かい始めた。

「・・・良二。もしかしたら俺達とんでもない事に手を出したんじゃねぇか。」
「でも・・・!そんな漫画見たいな事ある?」
「俺もわかんねぇよ!わかんねぇけど・・・兎に角なんとかしねぇと。」
「なんとかって。」
「・・・このままだと俺達の言葉が消えてしまうだろ。」
「・・・そうだね」
「とりあえず、もうそれは使うなよ」
「わかってる。」

沈黙が続き、次の駅に辿り着き
いつもの様に同級生達が何処かへ向かって行く。

そして昨日と同じように
渡辺が、こちらに気づき声をかけてきた。

「おっはよー!ってどしたの!?そんな深刻そうな顔して」
「いや。ちょっと色々あってさー。」
「何々?中野っち元気ないの??」
矢野と渡辺が昨日と同じように、直樹に話し始めた。

「園田君おはよ♪」
「・・・」
「園田君?」
「あっ!ごめん。」
「園田君も考え事?」
いつもなら嬉しいはずの澤田からの挨拶も、今の自分には嬉しくなかった。

「・・・うん。」
「相談乗るよ?私でよければ」
「・・・。もしもさ。普段使ってる言葉が突然消えたらどう想う?」
何を聞いてるんだ僕は。しかも澤田さんに。
「え?言葉が消えたら?・・・どうだろうねー。考えた事ないからなー。」
「そうだよね・・・。」
当然の反応だ。おかしな事言ってるんだから
「でも。」
少し考えたように澤田さんは話を続けた。
「私ならどうにかしてでも伝えるかなー。」
「どうにかしてでも?」
「うん。時々あるじゃん。伝えたくても言葉が出ない時、相手がわかってくれる時って」
何故だろうか。澤田さんの純粋さに笑顔が零れた。

「ちょっと!真剣に答えたのに!」
「ごめん!なんか嬉しくてさ」
「元気出た?」
「うん。元気出た。」
「そっか。良かった♪」

やっぱり僕は、澤田さんに思いを寄せているんだと
再確認した。彼女の言葉一つ一つに元気を貰える。
このまま付き合えればな。
なんて浮かれていたのは一瞬の事だった。

前の学生達がざわついている。
「なんだろう?なんか騒がしくない?」
「あゆ!園田っち!大変!!」

3人の元へ走って、矢野が指さす方を見ると
建物の上に大きな繭が出来ている。

「なんだろね??あれ」
すかさず直樹が近寄ってきた

「おい・・・あれまさか。」
「・・・」
僕は携帯を取り出し繭を確認する。

【 LINKされました 】

と画面いっぱいに言葉が広がる。

「リンクされ・・・た?」
校門前に先生たちが立っていて生徒達に 誰かの悪戯だから気にせず建物へと呼び掛けている

「なんだー悪戯かー。」
「先生たちが撤去するんだってー。」

「あんなもん撤去できんのか。」
「わからない。でもとりあえず先生たちに任せようか。」
「・・・そうだな」

そう言って建物に入り いつもと変わらない風景を目の当たりにする
「兎に角。様子見だな。」
「うん。」

クラスに向かい いつもの様にチャイムが鳴り響き
担当の先生がクラスに入り 朝礼を始め授業が始まる。

ほとんどの生徒が、先生に繭の事を問いかけるも
先程と同じ様に、今授業のない先生たちで撤去作業が行われている事を話す。

そして普段のように授業が始まる。

しかし。普段と違うのは、此処からだ。
先生が黒板に書いた文字が、数分にして、文字化けが起こり
黒板が落書きのような文字だらけになった。

同級生は、先生の書いた文字が読めないと茶化しだす始末。

「そんな・・・。」
僕が絶望し始めた時、屋上で大きなもの音が聞こえた。
窓から覗く生徒達を落ち着かせようと先生が必死に呼びかける。

暫(しばら)くして、撤去に向かった先生が各クラスの担当の先生の元に走ってきた。
深刻そうに話す先生たちの会話が少し聞こえた。

「繭から大きな蛾のようなものが羽化した。」
その言葉が聞こえた瞬間、体中に寒気が走った。
そして訪れた先生は、隣のクラスへ走って行った。

担当の先生は、ざわつく教室で待機とだけ言ったものの
同級生達は、更にざわつき始める。
少し時間が過ぎた頃、アナウンスが流れ全生徒、担当の先生と共に
順番に体育館への避難の指示が流れた。

まずは1年1組。10分後に僕等のクラス。1年2組。
移動中にまたアナウンスが流れ、直樹と渡辺がいる1年3組の移動の指示が流れた。
屋上を見ない様に速やかに移動するよう指示する先生たち。
その後も続々と体育館に移動してくる全校生徒。

体育館は、異様な空気になっていた。

蛾が羽化した事を冗談だろと茶化す生徒もいれば。
信じてどうするのか不安になっている生徒。
携帯をいじってSNSに投稿する生徒。
先生たちに問いかける生徒。

全校生徒が体育館に集まり少し時間が経った頃
滅多に観ない校長先生が、状況を説明し始めた。

怪獣映画に出てくるような巨大な蛾が、この建物の上にいる事。
その対処に警察や害虫駆除の業者を呼んでいる事。
とりあえず警察と業者が来るまでは待機と言う事。

納得のいかない生徒達がブーイングする中、直樹がこっそり僕の側まで来た。

「偉い事になったな。」
「どうしよう。」
「どうするも。とりあえず警察と業者に任すしかないだろ。」
「対処できると思う?」
直樹は息詰まっていた。

「何か方法ないかな。」
「何かって。削除出来ないんだろ?」
「うん。出来ないけど・・・」

暫くすると、校長に一人の先生が報告に行く。
「なんだって!?」
校長の反応に対し再びざわつき始める。

その反応を見て先生たちが静かにするようにと呼び掛ける。

それから数分時間が経った。
一向に警察や業者がくる気配がない。
全校生徒の不安がピークに達した頃、建物中に大きな物音が響き渡った。

その音に叫び始める生徒達。
そして一人の学生が、窓際に見えた何かに反応した。

それは、文字化けした言葉を羽織った大きな幼虫が、窓にへばりついているのだ。
それを見た学生達が一斉に叫び始めた。

「おぃおぃ・・・嘘だろ。」
「直樹!」
「・・・なんだよ」
「やっぱり俺、なんとかする」
「なんとかっつったって・・・。」
「何かあるはずだ!」
「だからどうするんだよ・・・。」

「とりあえずその成長した蛾の所まで行く。」
「はぁ!?お前何言ってんだよ」
「もしも俺の携帯の幼虫が成長したなら俺がなんとかしなきゃ」
「・・・ったく。そういう所だけは積極的なんだな」

「あんたら何か知ってるの?」
矢野と澤田と渡辺が、僕等の会話を聞いてたらしくこちらに立ち寄ってきた

「さっきから幼虫とか蛾だとか聞こえたけど知ってるんでしょ?直樹。」
「・・・いや。知っててもお前らは巻き込めない。」
「はぁ!?何それ!小学校の時は、無茶苦茶言って誘ってきた癖に、カッコつけるんですか!?」
「危険すぎるっつってんだよ!!それに、まだ対処方法も見つかってねぇ」
「そういう所だけ男面ですか?そういう所が嫌いなんだよ」
「なんだよ!俺は・・・。」
喧嘩する渡辺と直樹に紛れて、澤田が僕の手を握ってきた。

「いっ・・・。」
「園田君。何か知ってるなら話して。」
「でも。」
「言ったでしょ。相談乗るって。」
「・・・実は。」
「おぃ!良二!!」
澤田の真剣な表情を見て僕は、これまでの幼虫との出来事を話した。


「幼虫に言葉を教えたら、言葉が消えたって・・・。」
矢野も渡辺も、肩を落とした。
「何それ・・・。ハハハ。」
「・・・ごめん。」

「だから言っただろ。巻き込めないって。」
絶望する3人に、澤田がまた考え始め、思い付いた様に口を開いた。

「言葉が消えたって事はさ。もしも【 蛾 】って教えたらその虫消えないかな。」
その一言を聞いた瞬間、直樹と目を合わせ
試しに画面を開き打つも、エラーでまたトップに戻された。

「クソ・・・!ダメか。」
「もしさっきの事が本当なら、黒板に書いた言葉も消えたって事だよね」
「かもな・・・。なんで?」
「だから校長たちや先生たち、他の皆言葉数が減ったのかな?」
「良二のクラスなんて書いてた!?ってわかんねぇか」
「ごめん。思い出せない。」
「って事は、結局クラスに戻らないとか。」

「・・・。園田っち。直樹。」
渡辺が、重たい口を開き何やら覚悟を決めた様子で話し始めた。

「あんたらに任せていい?」
渡辺の言葉に、目を合わす僕と直樹。
「勿論あんた等だけに危険な目にはあわさせない」
「は!?」
「私もあんた等の幼馴染だから最後まで付き合わせて。」
「だからお前を危険な目に」
「直樹に何かあったら嫌だもん!!」
「・・・香織。」
「・・・これ以上言わせないで。」
「あぁー!!もうわかったよ!!好きにしろよ!!その代わり俺から離れんなよ!!」
「カッコつけて。」
「うるせぇな!じゃあ好きに行動しろよ!!」

二人の喧嘩を見て矢野が羨ましそうに「青春だね」と呟く。
「でもどうやってここを抜け出すんだ?」
「矢野っち!お願い!!」
「へ?お願いってなに?」

「きゃー!!!!」
矢野の叫びに、全校生徒・教師一同が振り向き
矢野の指さす方を確認した瞬間。
僕と直樹と渡辺が一斉に扉まで走った。

すぐに視線を戻した先生が、こちらに気づき
呼び止めようとするも、もう遅い。
扉を開き一気に閉め走り出す。

階段を上り2年のクラスに忍び込み一旦落ち着く。
「ふあー!!怖ぇー。」
「はぁ・・・はぁ・・・スリリングだったね」
「絶対後で補修だね。」
「間違いない。」
4人で、一旦深呼吸して周りを見渡す。
すると渡辺が叫んだ。

「あゆ!!何してんの!!あんた!!」
「ごめんね。着いてきちゃった」
「澤田さん!?」
「私も力になりたくて。」
「もー!!今から戻りなさい!!」

落ち込む澤田さんに直樹が声をかけた。
「戻るっつっても今戻ったら危険だろ。良二。お前が守ってやれ。」
「え!?俺!?」
「いいから。」

澤田さんの方を見ると、少し嬉しそうにしている。
「わかった。澤田さん側にいてね」
「うん。わかったよ♪あっ・・・!」
澤田さんは、立ち上がり黒板の方へと向かった。
「この黒板に 【 蛾 】って書いたら消えないかな?」
「書いてみるか。」
澤田さんがチョークに手を伸ばした瞬間だった。硝子を割り幼虫が侵入してきた。

思わず声を上げる澤田さんを直樹が急いで黒板から離したものの
直樹が幼虫に襲われる。
「直樹!!」
渡辺が椅子を持って、必死に幼虫を叩く。
幼虫がよろめいた隙に、離れる直樹。
「走れ!!」
そう言って、僕等は、教室から飛び出し
僕は、澤田さんの手を引っ張り
階段を駆け上がり屋上に繋がる階段の方へ走ると
階段前は、幼虫の群れが階段に群がっていた。

1年2組。僕等のクラスに急いで隠れ息を殺す。
「そんな・・・。」
絶望する渡辺を見て直樹が僕の方を振り向く。
「良二。俺が囮になるからその隙に、香織と澤田さん連れて屋上に走れ」
「はぁ!?そんな事出来るかよ!!」
「そうよ!!馬鹿な事はよして!!何かあるはずよ」
「・・・香織。」
「何よ。」
「あん時は、ごめんな。」
「こんな時に何!?」
「こんな時だから言わせてくれよ!」

「・・・。」
渡辺が悔しそうに唇を噛んでいる姿を見て直樹が渡辺の頭を撫でた。
「大丈夫だって。今度は信じてくれ」
そう言って直樹は、教室を出ようとする
「直樹!!」
「良二。わかってるよな。俺の言いたい事」
「・・・でも」
「不安そうな顔すんな!お前は、ちゃんと片づけて明日の昼飯奢る!ただそんだけだ!」
いつもの様に笑顔で、少年のように陽気な直樹の顔がそこにはあった。
そう言って、直樹は教室を出ていく。

直樹の雄たけびが廊下に響き渡った。
その後、もの凄い音が廊下中に響いた。

「香織!!」
澤田さんの声に、それに続くように渡辺が教室を飛び出そうとした所立ち止った。
「あの馬鹿に・・・!かっこつけさせたままだと私がムカつくの!!」
振り返った渡辺は、泣き崩れてくしゃくしゃな顔で、まるで鬼のような顔立ちになっていた
「園田っち!ちゃんとあゆの事頼んだわよ!!私は、あの馬鹿死んでも連れ帰るから!!」
そう言って渡辺も教室を飛び出した。

困惑する澤田さんの手を強く握り僕等も続くように澤田さんの目を見つめた。
「2人の想いを無駄には出来ないよ。行こう!」
澤田さんの手を引っ張り、幼虫たちがいなくなった隙に階段まで移動し屋上の扉までたどり着く。

2人を心配そうな澤田さんの顔を見て
自然と出た「大丈夫。僕が守るから」という言葉に。
少し安心した表情を見せてくれた。

扉をゆっくり開くと先生たちが言っていた
怪獣映画に出てくるくらい巨大な蛾が、目の前に羽を広げて待ち構えていた。
羽の模様をよく見るとこれまで教えたであろう言葉が模様として刻まれている。

蛾は、じっとこちらを見つめ動かない。
しかしその姿を見た僕は震えが止まらなくなってしまった。

恐怖。
得体の知れないコイツをどうやって消去するんだ。

躊躇(ちゅうちょ)している間に蛾は、大きく広げた羽を前後ろに広げ
突風を起こし僕等を吹き飛ばした。
必死に澤田さんの身体を抱きしめそのまま
フェンスまで吹き飛び力強く打ってしまい意識が朦朧(もうろう)とする。

「園田くん!!大丈夫!!??」
くそ。どうすればいいんだ。あんな化物。

蛾は、今にも飛び立ちそうに羽をまた広げている。

どうすれば。どうすれば。
意識が朦朧とする中。
今までの事が走馬灯の様に蘇ってきた。

送り主:不明。
【貴方の大切なコトバを、コノ子に教えてクダサイ】

「言葉が消えたって事はさ。もしも【 蛾 】って教えたらその虫消えないかな。」

【 LINKされました 】


LINK・・・。

もしかして。
重たい身体を起こし僕の身体を揺すってくれた澤田さんの肩に自然に手が届いていた。

「澤田さん。さっきのチョーク持ってる!?」
「え?あ・・・持ってるよ」
「二つに割れる!?」
「えっちょっと待ってね。」

蛾は大空まで飛び立ち、街に向け進行しようとしている。

「これでいい!?」
「頼む!なんとかなってくれ!!」

屋上に二人で書いた

LINKという文字。

蛾は、いよいよ羽を上下に広げ飛び立ってしまった。

しかし次の瞬間、蛾の羽に刻まれた【LINK】の文字によって
羽が光と共に、消え始めそのまま 蛾の身体が、こちらに向いた。
急いで携帯を確認すると
画面から【 LINKされました 】の文字が消え
【 蛾 】という文字を打ち込んだ。

そして慌てて階段まで戻り、落下してきた蛾がそのまま屋上から学校の一部をえぐり削り
そのままグランドに叩き落ちた。
その音を聞きつけ体育館に待機していた学生や教師達が飛び出してきた。

すると蛾の身体が光、放ち消え始めた。

蛾が消えたと同時に学校中の幼虫の身体も光始め
そのまま光と共に消えて行った。

傷だらけになった直樹と香織が、辺りを確認した
「終わったのか・・・。」
「・・・やったんだね。」
「はーぁ疲れた。」
その場に崩れた直樹に香織は抱き着いた。

「わぁ!なんだよ!!」
「・・・良かった。」
「・・・だな。」


崩れ落ちた屋上から落ちない様にゆっくり下を確認する僕と澤田さん

「終わったね。」
「・・・うん」
「いてて。」
安心すると先程フェンスにぶつけた時の痛みが一気に身体に来て倒れてしまった。

「大丈夫!?園田くん!!」
「ハハハ・・・なんとか。」

覗き込む澤田さんの顔を見ていると
いつの間にか僕等は 何と戦って何の為に戦っていたのか忘れていた。

恥ずかしくなったので屋上から見える景色に目を移した。
気づけばいつの間にか陽が落ち始め、空は綺麗な夕焼けになっていた。

景色を見る僕を見て澤田さんも景色を見始める。
「うわー!凄く綺麗だね!」
「うん。疲れも吹き飛ぶね」
「うん!」
「でも澤田さんと見れて良かった。」
自然と出たその言葉に、やってしまったと澤田さんの方を振り向くと
不思議そうにこちらを見つめている。

「え?」
「あ・・・いや。その・・・。」

少しの沈黙の時間が経ち 僕は勇気を振り絞り澤田さんへの想いを口にした。

「澤田さん。」
「・・・はい」
「好きです!ずっと前から・・・!」
そのまま勢いで立ち上がり手を澤田さんに差しだした。

「僕と・・・付き合ってください!!!!」

澤田さんは、少し迷い僕の手を握ってくれた。
顔を上げると笑顔でこちらを見つめてくれている。
それは照れ隠しにも思えた。

「【友達】からでもいいかな?」
「あ・・・はい。」

「あっ。」
「えっ?」
「流れ星だ。」


その後、皆の記憶から今日の一部の出来事は、忘れ去られ。
学校の復旧作業の為。
少しだけ早い夏休みが始まった。


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2013年10月31日 ONEP.jp

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ONEP.jpでは、オフ会を開くことやサイトの外で実際に会うことを禁止します。他の サイトでも、そういった危険性があることを知っておいてください。

モバゲーより流用

2013年8月5日 ONEP.jp